東北工業大学

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学長室

学長メッセージ集

No.23東北工業大学が目指すもの

2015.01.07

1964(昭和39)年4月1日、東北工業大学は電子工学科と通信工学科の2学科で、仙台市八木山に開学しました。当時の日本社会の時代背景は、一つに敗戦での疲弊から立ち直ること、二つに電子工学が勃興したこと、三つに科学技術振興への高揚のときでした。つまり、日本が高度経済成長期の開始に向かう中で、それを牽引する技術が飛躍的に進展しようとする胸躍る時代。日本全体が活気に満ち、日本が一方向にベクトルをそろえていた時でした。

このような時代に開学した東北工業大学にとって決して忘れることができないことは、八木久兵衛氏(※1)をはじめとする篤志家による寄付金、土地の寄付、郵政互助会からの多額の低利資金融資、さらには東北大学、宮城県、仙台市からの教育・人的支援です。
当時、東北唯一の工業系単科大学として、東北地方の産業界の期待を受けて開学した東北工業大学は、まさに新たな時代の機運を反映したものであり、「わが国、特に東北地方の産業界で指導的役割を担う高度な技術者を養成する」という建学の精神は、社会からの期待の大きさも示しているものです。

東北帝国大学工学部機械工学科初代教授、同工学部長、さらに宮城県知事をつとめられた宮城音五郎先生は、当時81歳という高齢にも関わらず、東北工業大学初代学長に就任されました。当時最速の特別急行列車(特急)でも片道4時間にも及ぶ東京―仙台間を、文部省との交渉のために多数回往復されました。開学後は学生と学問を愛され、水を得た魚のように、新設大学の発展と充実のため全力を尽くされた方です。
現在の東北工業大学は、東北地方の工業系単科大学の先駆者にふさわしく、工学部5学科、ライフデザイン学部3学科となり、キャンパスも八木山、長町の2キャンパス体制になっております。その間、東北地方としては東北大学に次ぐ初めての工学系大学院を開設し、現在の2研究科6専攻、すべて博士課程を擁する大学としての基礎が創られました。

大学創設50年を経過した今、日本も世界も大きく変わりました。人々や学生のライフスタイルも変化しています。そしてまた、2011(平成23)年の東日本大震災、さらにそれに伴う原発事故の脅威は、技術・デザインと技術者育成に携わる私たちの意識を大きく変えざるを得ない状況にあります。自然に対する畏敬の念を持たなければならないこと、人間の尊大さ、高慢さに対する反省も求められています。

1978(昭和53)年の宮城沖地震でも、東北工業大学は建物に大きな被害を受けています。しかしその経験と本学教員による先駆的な建物強化策の研究と実践により、東日本大震災では、大学建物に大きな被害もありませんでしたので、近隣住民の被災場所としての機能を果たすまでになりました。また、学都仙台コンソーシアム(※2)の協力の下、東北工業大学前学長の沢田康次先生が中心となり復興大学を立ち上げ、東北工業大学は事業代表として復興の一翼を担っております。

更に、前・工学部工業意匠学科(現・ライフデザイン学部)学科長であった秋岡芳夫教授(※3)に代表される「一人一芸の村計画」で東北・北海道での町おこし、村おこしで大きな功績をあげた東北工業大学の伝統は今も引き継がれ、平成26年度文部科学省地(知)の拠点整備事業(COC)でも「オール仙台ライフデザイン実践教育共創事業」として採択されました。その骨子は

• 仙台市まちづくりの課題の発見と解決
• まちづくりを通じた実践教育
• 地域社会に求められる人材の育成

以上の3項目からなり、東北工業大学はこれまでの伝統を背景に、今まさに地の拠点としてさらに強く歩み始めました。

創立50周年を迎えた平成26年4月には、東北工業大学理事長の岩崎俊一先生が米国のベンジャミン・フランクリン・メダルを受賞いたしました。東北工業大学(Tohoku Institute of Technology)TITという地方の一大学が、アメリカのMIT(Msachusetts Institute of Technology、マサチューセッツ工科大学)たらんとした先人のとてつもない夢の一つを実現したことは、日本の私立大学にとりまして、あるいは東北地方の工業系単科大学の先駆者としては、来るべき50年に向かっての大きな励ましとなりました。

一極集中から多極分散は時代の大きな流れです。東北の復興なくして日本の発展はないでしょう。東北工業大学はまさに今、建学の原点に立ち返り、日本、特に東北地方における産業界に貢献し、他者を思いやる人材を育てていかなければなりません。それがこれからの50年に向かう東北工業大学の使命です。

• 地域に根ざし、地域のニーズに応え、地域から信頼される大学
• きめ細かな教育により、高度の知識・技術を身につけた人材を育成する大学

を合言葉に、東北工業大学は同窓生3万2千余名と共に歩み続けます。東北そして日本の明るい未来をめざして、「東北から、新たな50年へ発進」する東北工業大学でありたいと思います。

(本文は平成26年6月21日、東北工業大学創立50周年記念式典(※4)の式辞をもとに、新年にあたり学生、教職員を念頭に置き、記したものです)

※1 八木久兵衛氏
http://www.taihakumachikyo.org/taihk/taihk0259/index.html

※2 学都仙台コンソーシアム
http://www.gakuto-sendai.jp/

※3 秋岡芳夫
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%8B%E5%B2%A1%E8%8A%B3%E5%A4%AB

※4 東北工業大学創立50周年記念式典
http://www.tohtech.ac.jp/news/2014/06/50_2.html